上野オークラ劇場は、名前だけ聞くと映画館に見える。
実際、映画は流れているし、席に座って観る場所だ。
でも、行ってみるとすぐ分かる。
ここは、ただ映画を観るための場所ではない。
オークラ劇場には1Fと2Fがあり、さらに同じ建物に特選劇場(入口は違う)がある。
同じ建物の中でも、フロアごとに空気が違う。
入れる人の条件や料金が違うから、集まってくる人も変わる。
初めて行くと、何が起きているのか分からない。
どこに行けばいいのか迷う。
どう振る舞えばいいのか戸惑う。
あの雰囲気を、異様だと感じる人も多い。
でも実際は、ルールがない場所ではない。
暗黙の了解や、自然に守られている線引きがある。
それを知らないまま行くと、ただ疲れる。
ということで、オークラ劇場と特選劇場の違いを整理しつつ、
- 入ってからどう動くか
- どこに座るか
- 何をして、何をしなくていいのか
を、女装で過ごす視点からまとめていく。
ちなみに、この映画館をおすすめする記事ではない。
行く前に、どう動くかを想像しておくためのメモとして読んでほしい。
行ってから、挙動不審にならずに済むように、頭の中で一度だけ流れをなぞっておくと心強い。
知っているだけで、余計な緊張は減り、自分のペースで過ごせる。
フロアごとの基本情報と料金
上野オークラ劇場には、オークラ劇場の1Fと2F、そして特選劇場(入口は違う)がある。
同じ建物の中だが、料金と入場できる人が違う。
オークラ劇場 1F
料金は1700円。
男(純男)、女装、そして女子も入場できるフロアだ。
そのため、女装との交流を目的に来ている人だけでなく、女子と交流したい人も混ざる。
空気は比較的入り混じっている。
オークラ劇場 2F
料金は2000円。
入場できるのは、男(純男)と女装のみで、女子は入れない。
女子がいない前提なので、女装との交流を目的に来ている人が集まりやすい。
1Fよりも落ち着いているのが特徴だ。
なお、2Fの料金を払っていれば1Fにも入れる。その場合、1Fと2Fは自由に行き来できる。
特選劇場
料金は500円と安い。
入場できるのは、男(純男)と女装のみで、女子は入れない。
料金が安い分、人は多い。
女装との交流を求める人だけでなく、男同士の交流を目的にしている人も多く、全体的に人の密度が高い。
なお、3館とも途中の入れ替えはない。
映画は3本立てで、1本が終わると次が始まり、3本で一通りになる。
そのあと一度明るくなって清掃が入るが、退館する必要はない。
なので、一日中そのまま中にいられる。
途中で席を移動したり、休憩したりしながら、
自分のペースで過ごせる。
入場から中に入るまでの動線
初見で一番キョドりやすいのが、入ってから最初の数分だ。
何か特別なルールがあるわけではないが、流れを知らないと無駄に緊張する。
やること自体は、実はかなり単純だ。
オークラ劇場の場合、券売機で1Fか2Fを選ぶ
建物に入ると、すぐに券売機がある。
まずはここで、1Fか2Fかを選んで券を買う。
ここで迷って立ち止まっても、誰も気にしない。
券売機の前で少し考える時間があっても、不自然ではない。
券を買うと、出てきた券を受付の人が手を伸ばして直接取る。
こちらから差し出す手間を省き、勝手に受け取って、モギってくれる感じだ。
特別なやり取りはない。
何かを細かく聞かれたり、説明を受けたりすることもほとんどなく、券を渡す動作も一瞬で終わるので、この流れで戸惑うことはまずない。
受付の人の雰囲気も悪くなく、淡々としてはいるが冷たい感じではない。
必要以上に踏み込まない、ちょうどいい距離感だ。
声をかけられるとしたら、2Fの券を買ったときに「割引券を発行しますか」と聞かれることがあるくらいだ。
この割引券は、2週間以内に再度来る予定がある場合、次回600円引きになるものだが、必要なければその場で断ってもまったく問題ない。
深く考える必要はなく、軽く判断できる程度のやり取りだ。
1Fと2F、それぞれの入り方
1Fを選んだ場合は、そのまま目の前にある扉に進むだけだ。
動線は分かりやすく、迷うことはない。
2Fを選んだ場合は、受付の左脇にある階段を上がる。
そのまま上がって、扉を開ければいい。
ちなみに、2Fの料金を払っていれば、1Fにも入れる。
2Fから1Fへ行くときも、1Fから2Fへ戻るときも、素通りで問題ない。
中に入ってから、最初にすること
中に入ったあと、ここで何か正解の動きを探そうとすると、逆にぎこちなくなる。
実際は、それぞれが好きなタイミングで、好きな場所に向かっている。
どこに行っても、不自然ではない
いきなりシアター内に入ってもいいし、外の休憩スペースで少し座ってスマホをいじくってもいい。
喫煙ブースでひと息つく人もいるし、周りの様子を見ながらふらふら歩いている人もいる。
入った直後に何をしていても、特別目立つことはない。
ここでは、入場した瞬間から何かを始めなければならない、という空気はない。
だから、落ち着くまで少し時間を使っても問題ない。
シアターには、いつ入ってもいい
シアター内には、上映中でも入ってもいいし、途中で出て、また戻ってきても問題ない。
映画の途中で席を立つ人もいるし、外の休憩スペースに出て、しばらくしてから戻る人もいる。
それが普通の動きとして成立している。
「今は入るタイミングではないかも」
と気にする必要はない。
中に入るかどうかは、その時の気分で決めていい。
この自由さがあるから、入ってすぐにシアターに行かなくてもいいし、
しばらく外で様子を見てから入る、という動きも自然だ。
トイレと身だしなみの現実
身だしなみが気になるなら、トイレに行くのも自然だ。
トイレにはフィッティングボードがあり、着替え自体はできる。
ただし、スペースは狭く、正直使いやすいとは言えない。
大きく着替えるというより、スカートやパンツをミニスカに変えるなど、小さい調整に使う程度が現実的だ。
洗面台でメイクをすることもできるが、他の利用者の邪魔になりやすい。
長時間のメイクは避けて、メイク直し程度にしておくのが無難だ。
服装は自由だが、困らない形に
オークラ劇場では、服装に決まりはない。
動きやすさを優先してもいいし、見た目に寄せてもいい。
中にいる人たちの服装も、本当にさまざまだ。
ただ、過ごしてみると分かるのは、
あまりにも固めた服装だと、あとで疲れるということだ。
触れられたり、距離が詰まったりする場面では、
締め付けや硬さが、そのまま負担になる。
だから、正解を選ぶというより、
困らない形にしておく、それだけでいい。
動きやすさと見た目のバランスは、その日の気分で十分だ。
シアターに入るなら、席はどこを選ぶか
シアターに入ったら、次に考えるのが席だ。
といっても、正解があるわけではない。
ただ、座る場所によって、過ごしやすさは変わる。
横一列が空いている列を選ぶ
混み具合にもよるが、できれば横一列に誰もいない列を選びたい。
隣に来たい人が反対側から自然に入ってこられるからだ。
誰かの隣に座る必要はない。
ここでは、人の隣に座るという行為自体が、ある種の意思表示になる。
無理に詰めるより、余白を残して座ったほうが楽だ。
場所によって空気は少し違う
席の場所によって、空気が違う。
最前列付近は、交流がかなり過激になりやすい。
一番後ろの立ち見スペースは、立ったままの交流になる。
無難なのは、後ろ寄りの通路沿い
初めてなら、中央より少し後ろ、外側の通路沿いが無難だ。
居心地が合わなければ、途中で席を移動しても問題ない。
一度座った席に、最後までいなければならないわけではない。
交流の始まり方と、暗黙の切り替え
席に座ると、ここからすべてが始まる。
といっても、何かが急に始まるわけではない。
自然な流れを紹介しておく。
座ると、自然に交流が始まる
女装で席に座っていると、隣に人が来て声をかけられることが多い。
「きれいですね」といった定番の言葉から始まり、「触ってもいいですか」と確認されることもある。
太ももに軽く触れてくるなど、距離の取り方は人それぞれだ。
もちろん、これを断ることもできる。
断れば、残念そうな顔をして去っていく。
それだけの話だ。
受け入れた場合は、交流が始まる。
その様子を見て、相乗りしてくる人が現れたり、至近距離で観察だけしている人がいたりもする。
この空気は、慣れてしまえば日常になるが、初めてだと異様に感じるだろうがビビらない。
清掃の時間で、強制的に切り替わる
映画が3本終わると、一度明るくなり、5分ほどの清掃時間が入る。
このタイミングでは、どれだけ交流が盛り上がっていても、一度中断する。
これは暗黙の了解だ。
自然と手が離れ、距離が戻る。
ホール外では、交流をしない
シアターの外には、座席や喫煙ブースがある。
ここでは、距離の近い交流はしない。
普通の会話はあっても、シアター内のような交流は行わない。
断り方と線引き
この場所では、交流する人もいれば、しない人もいる。
大事なのは、自分の線を自分で決めておくことだ。
断る理由は、何でもいい
交流を断るとき、理由はシンプルでいい。
「今、ゆっくりしているんで」
「映画を見ているので」
「見学に来ただけなので」
「他の女装さんを見に来たので」
このあたりで十分だ。
相手に納得してもらう必要はないし、正直な理由を全部伝える必要もない。
角が立たない言い方を選ぶほうが、あとが楽だ。
言わなくていいこともある
「タイプではない」
「あなたはダメ」
みたいな言い方をする必要はない。
正直ではあるが、場の空気を考えると得るものは少ない。
ここでは、断ること自体は普通の行為だ。
相手も、断られる可能性がある前提で声をかけている。
交流中のNGは、短く伝える
交流を受け入れたあとでも、
触られて嫌な部位が出てくることはある。
その場合は、
「◯◯はダメ」
と一言伝えるか、手で制すだけで伝わる。
断ったあとも、居づらくならない
断ったあとに、場に居づらくなることはほとんどない。
断れば、そのまま離れていく人が大半だ。
来る人もいれば、去る人もいる。
それが当たり前の空気になっている。
なので、無理に合わせる必要はない。
自分の線を守っているほうが、結果的に長く楽に過ごせる。
しつこい人や、ヤバい人がいたら
基本は、はっきり断る。それで終わることがほとんどだ。
それでも、しつこい人やヤバい人と当たったらどうするか。
そういうときは、無理に一人で対応しなくていい。
この場所は、トラブルが起きると困る場所だ、という共通認識がある。
だから、空気がおかしくなる前に、周りが自然と動く。
実際、しつこい人がいれば、周囲の人が間に入ったり距離を取らせて、いつの間にかいなくなっていたりする。
こういう場所は、トラブルを起こすと、場所そのものがなくなる可能性がある。
それを分かっている人が多いから、治安はかなり意識的に保たれている。
今この場で、女装で過ごしているとき、立場としては女子側だ。
嫌な相手から守る側に、男たちが回ることも珍しくない。
そういう意味では、意外と頼もしく感じる瞬間もある。
フロアごとの空気と、過ごしやすさの違い
同じ建物でも、1F・2F・特選では、空気がかなり違う。
どこが良い悪いという話ではなく、向き不向きがはっきり分かれる、というだけだ。
1Fは、人が多いわりに静かな時間もある
1Fは、女子も入れるフロアだ。
そのため、女装と交流したい人だけでなく、女子を目当てに待っている人も多い。
人は多いが、女装に声がかかる頻度は、日によってかなり差が出る。
座っていても、女子が降臨しているときは、しばらく何も起きない時間が続くこともある。
様子見で入りたいときや、いろんな層が混ざった空気を見たい人には向いている。
2Fは、女装が一番落ち着いて過ごしやすい
2Fは、男と女装だけが入れるフロアだ。
女子がいない分、女装との交流を目的に来ている人しかいない。
人の数はほどほどで、全体的に落ち着いている。
女装でゆっくりしたいなら、ここが一番楽だ。
初めてなら、まず2Fを基準に考えてもいい。
特選劇場は、とにかく人が多く濃い
特選劇場は、人が多く、密度も高い。
女装との交流目的の人だけでなく、男同士の交流を求めて来ている人も混ざる。
短時間で、何人もの手が伸びてくる。
刺激は強いが、疲れやすい場所でもある。
自分の線引きがはっきりしていないと、消耗しやすい。
迷ったら、行き来して決めればいい
2Fの料金を払っていれば、1Fにも入れる。
中に入ってから、空気を見て移動してもいい。
どこか一つに決め打ちする必要はない。
近くにある店
オークラ劇場の周辺は、思っている以上に使える場所が揃っている。
中だけで完結させようとせず、外も含めて考えると、気持ちがかなり楽になる。
着替えは、快活CLUBを使うのが楽
徒歩6〜7分のところに、快活CLUBがある。
女装で行くなら、ここで着替えてから向かうのが一番無難だ。
個室なので落ち着いて準備できるし、荷物を広げても気を使わなくていい。
オークラ劇場内のトイレで着替えるより、ストレスは圧倒的に少ない。
コインロッカーは、選択肢がいくつかある
快活CLUBから徒歩1分圏内に、コインロッカーが2か所ある。
着替えたあと、荷物を預けてから向きたい人には便利だ。
また、オークラ劇場の入口前にもコインロッカーがある。
空いていれば、ここを使うのもアリだ。状況に応じて使い分けられる。
すぐ近くにコンビニがある安心感
オークラ劇場から徒歩20秒ほどの場所にセブンイレブンがある。
ウェットティッシュ、飲み物、タバコなど、ちょっとした物はここで揃う。
館内にも、飲み物やアルコールの自販機はあるので、急ぎかどうかで使い分ければいい。
ひと息つける喫茶店も近い
同じく徒歩20秒の場所にルノワールがあり、
徒歩1分ほどで星乃珈琲店もある。
中で少し疲れたときや、仲良くなった人と一緒に外に出るときに使いやすい。
実際、話が合ったおじさんにパフェを奢ってもらう、そんな流れになることも珍しくない。
オークラ劇場の中だけが、すべてではない。
すぐ外に、こうした場所があると思えるだけで、過ごし方の幅はかなり広がる。
ただ、一度外に出ると再入場に別途料金がかかる。金額は400円前後だったはずだ。
まとめ|行く前に知っているだけで、ずいぶん違う
上野オークラ劇場は、行ってみると分かるが、勢いで飛び込む場所ではないが構えすぎる必要もない。
フロアの違いを知っておくこと。
入ってからの動線を頭に入れておくこと。
席の選び方や、距離の取り方を知っておくこと。
断り方や線引きを、あらかじめ決めておくこと。
それだけで、中での動きはかなり楽になる。
この場所は、異様に感じる部分もあるが、暗黙の了解と不自然なまでの秩序がある場所だ。
ルールを知らないと疲れるが、知っていれば、必要以上に怖がる場所ではない。
行く前に一度読んで、どう動くかをイメージしておくと、行ってから困らない。